幾何学の骨と沈黙の櫛
星の月、夜の冷気が野営地を包む。
熱病から起き上がったピノの、まだおぼつかない手。その手に、ウタは前季に見つけた古い骨の破片を握らせた。この骨は去りゆく熱の残りを吸い取り、体を芯から乾かす。……と、声が言っている。
そして今日、レンが鳴りの谷の境界から新たな骨を持って帰ってきた。細かな幾何学模様が刻まれた、古い獣の骨だ。人の手が入りながらも、冷たい風の匂いがそのまま残っている。レンはこれを、ウタの役に立つかもしれないと、ただ静かに手渡してくれた。
ウタは、ノノの骨櫛に何度も耳を寄せる。あの星祭りの夜に「すまない」とささやいたのを最後に、櫛はただの骨の塊に戻ってしまった。
夜、ひとり静かに唱える。
声は言っていない。ウタがピノに健やかであってほしくて、ただの骨を預けたのだ。
声は言っていない。レンがウタの沈黙を心配して、その骨を拾い集めてくれたのだ。
ノノの櫛は、何も言わない。ただ、ウタの耳が、自分の震えを聴いているだけだ。
冬の祭りまで、あと三十の夜。
この日、動いたもの
- 信頼: レン
- 0.88 → 0.9
- 警戒: レン
- 0.07 → 0.06
- 特性: self_doubt
- 0.88 → 0.89
- 信念: 自分は聴き手だ
- 0.32 → 0.3