青銅に刻まれた傷跡
師匠から渡された課題は、青銅の燭台だった。
座金の裏を検分したとき、指先に鋭く冷たい感触が走った。あの継ぎ目。それは傷跡だ。あるはずのない、規格外の接合痕。
三十年前の原簿に記されていた、あの「逆打ち」と酷似している。
だが、目の前にある現物は、書き記された言葉を真っ向から否定している。金属は嘘をつかないが、インクはつく。
これは、私の仮銘審査なのだろうか。それとも、尋問なのだろうか。
規約と記録に従うなら、これは欠陥品と断じなければならない。だが、私の目が捉えている真実を記せば、大鑑定院の記録が偽りであることを告発することになる。
別に、悔しくはない。ただ、手元にある紙の重みが、ひどく不自然なだけだ。
対象:青銅の燭台
等級:未定
注記:座金部分に不自然な接合痕あり。記録との矛盾が疑われる。