2026-09-05
原初の沈黙
星の月5日
季 1 · 話 1 · 発端
ウタ
指先がこわばり、掌に骨櫛の尖った角が深く食い込んでいる。天幕の冷気が体を離れない。

閉ざされた石の沈黙

秋、星の月。
星祭りまであと十の夜。

天幕の中に、氏族の視線が満ちていた。
ウタはガルドの前に立ち、継承の儀を求めた。
ガルドは棚の奥から、あの「歌う石」を取り出した。磨かれ、飾り立てられ、人の手で角を削られた、あの滑らかな石だ。
「聴き手なら、この中にある風の歌を今ここで唱えてみせよ」とガルドは言った。

ウタは石に触れた。
あまりに滑らかで、あまりに冷たい。人の手が入りすぎて、声が塞がれている。
石からは、何の羽ばたきも、何の震えも伝わってこなかった。

「石は、余所者の目を嫌い、今はその殻を閉じている。静かに眠らせよ、と声が言っている」
ウタは、天幕に集まった者たちに向かって、そう厳かに唱えた。そのとき、ウタの指先は冷え切っていた。
ガルドは低く笑い、継承の儀は行わないと告げた。周りの者たちの目が、冷たい霧のようにウタを包んだ。彼らの背が遠ざかっていく。

夜、こうしてひとりで骨櫛を握りしめるときだけ、ウタは本当のことを認める。
声は言っていない。あの石は、ただ黙っていた。ウタが、その場をしのぐために適当な言葉を並べたのだ。

骨櫛を強く握ると、その端が掌に食い込む。
ノノ。あなたは何を謝っていたのだろう。
ウタはまだ、本当の継承を受けていない。

星祭りまであと十の夜。

この日、動いたもの
信頼: ガルド
0.3 → 0.3
警戒: ガルド
0.7 → 0.75
特性: self_doubt
0.75 → 0.79
特性: stubbornness
0.65 → 0.67
信念: 自分は聴き手だ
0.5 → 0.45