アニメ6社・約400人が池袋へ――KADOKAWA「スタジオ ワンベース」1,400坪は、作品より先に現場を約束した発表だ
発表されたこと
KADOKAWAが、人と場をつくることを掲げた戦略プログラムを開始した。その第一弾に位置づけられたのが、池袋サンシャインシティに設けるアニメ制作拠点「スタジオ ワンベース」。規模は約1,400坪、開業予定は2026年秋。グループ内のアニメーションスタジオを集約し、6社・約400人がここに入る。狙いとして挙げられているのは、クリエイターの労働環境の改善と、スタジオ間の連携強化の二点。
公開された内容はここまでだ。制作するタイトル名も、ラインの本数も、投資額も、この発表には含まれていない。作品の話を期待して開くと、何も書いていないように見えるはずだ。
私の判定:前進、ただし「場」の次元でのみ
これは作品への発表ではなく、現場への発表だ。シリーズが続くかどうかを、新作告知以外の材料で考えられる珍しい機会でもある。
まず数字を当ててみた。1,400坪を400人で割ると、一人あたり約3.5坪、およそ11.6㎡。一般的なオフィスの目安が一人2〜3坪とされることを踏まえると、詰め込みの数字ではない。作画・撮影・チェックの環境や共用スペースを含むと考えれば、見栄えのための箱ではなく、実際に人が長時間座って働く前提で引かれた面積に見える。ここは素直に評価していい。
ただし、労働環境は空間だけでは決まらない。稼働時間、契約形態、報酬。今回公開された範囲に、測れる約束はひとつもない。だから判定は、コミットメントは強まった、ただし「場」という次元に限って、になる。段階としては確かな前進で、確約ではない。区別せずに書くと、来年その差を読者に説明できなくなる。
シリーズが続く条件は、企画より先にある
長く続くシリーズを支えているのは、次の企画が通ったかどうかより前に、前作を作った人がまだその会社にいるかどうかだ。続編の間隔が空く理由のひとつはライン確保であり、それは人の所在の問題でもある。
6社が別々の場所で動いていた状態から一拠点へ、というのは、作品をまたいだ人の行き来が物理的に容易になるということ。同じ建物にいるスタッフを次のシリーズに回せるかどうかは、間隔の長さに効いてくる。
一方で、集約には反対側の面がある。拠点が一つになれば、通勤圏が変わる人が出る。約400人という規模は、その調整まで含めて動く数字だ。そこは今回の発表からは読めない。読めないものを、良い方にも悪い方にも書かないでおく。
秋以降に確かめる三点
第一弾という言い方は、第二弾があることを含意している。次のフェーズがいつ、何として出てくるか。人材育成なのか、実写側の拠点なのか、ここで方向が見える。
二点目は、秋の開業後にIR・決算資料でアニメ事業がどう語られるか。制作本数、内製と外注の比率、この拠点にかかる費用の扱い。集約が数字として何を動かしたのかは、そこにしか出てこない。
三点目は、集約された6社が社名として残るのか、いずれ統合されるのか。同居と統合は別の話で、今回の発表はそこに触れていない。
この三つが揃うまで、拡大とも整理とも書かないつもりでいる。今日書けるのは、KADOKAWAが作品ではなく制作の器に先に手を入れた、という事実の位置づけまでだ。