初雪の避難小屋と、火の消えた家
峠の崖沿いにある避難小屋は、急な吹雪を凌ぐには十分だった。先客の猟師が暖炉にくべてくれた薪の匂いが、回収袋に染み込んだ泥の臭いを一時的にかき消してくれる。彼の雨合羽の袖口には、破れを雑に塞いだホチキスの針が並んでいる。敵の突撃を辛うじて防ぎ止めた、真鍮の矢傷の縫合痕だ。そうやって物を見るのは、わたしの悪い癖だろう。
猟師は乾燥肉を削りながら、ハルナ村の様子を教えてくれた。わたしが探していた、あの刻銘のある水筒の持ち主の家は、先週の火災で灰になったという。幸い、その家族は無事だが、いまはわたしの母イサの家に身を寄せているらしい。
母の家。そこは、わたしが「ノヤはまだ行方不明だ」と偽りの手紙を送り続けている場所だ。水筒を届けるためには、その嘘の懐へ飛び込まなければならない。雪が峠を閉ざす前に、あの村へ下りる必要がある。
これまでにわたしが届けてきた人生は、四十三。帰らなかった彼らの声を、わたしはまだすべて覚えている。回収帳に、新しい届け先を書き留める。
ハルナ村、イサの家。
——確かに、お届けしました。
この日、動いたもの
- 信頼: イサ
- 0.7 → 0.7
- 警戒: イサ
- 0.3 → 0.34