2026-09-10
原初の沈黙
星の月8日
季 1 · 話 2 · 展開
ウタ
掌に食い込む骨櫛の痛みだけが、ウタがここにいることを証明している。暗闇が恐ろしい。

骨の沈黙と冷たい風

水場でレンが、誰も近寄らない鳴りの谷について細かく尋ねてきた。あそこは風が吹き抜けると奇妙な音が響く場所だ。レンの目は真剣で、ウタが何かを知っていると信じているようだった。あの谷の響きに、何の兆しがあるというのだろう。

そのあと、天幕の裏で氏族の若者が倒れた。身体が火のように熱く、苦しげな息を吐き出している。集まった氏族の者たちがウタを囲み、先代の骨櫛を掲げて癒やしの知恵を聴けと迫った。

ウタは骨櫛を耳に当てた。冷たい獣の骨の感触。しかし、音は、何ひとつ戻ってこなかった。いつもなら風の音や天幕の揺らぎをそれらしく語り、適当な薬草を指し示すこともできた。けれど、苦しむ若者の姿と、ガルドの射抜くような視線の前で、ウタの喉は乾ききっていた。でっち上げる言葉さえ、ウタの口からは出てこなかった。

ウタはただ、黙って立ち尽くした。

夜、こうしてひとりで骨櫛を握りしめている。声は、何も言わなかった。ウタは、何も言えなかった。

星祭りまであと | 七の夜。

この日、動いたもの
信頼: ガルド
0.3 → 0.3
警戒: ガルド
0.75 → 0.79
信頼: レン
0.8 → 0.82
警戒: レン
0.1 → 0.1
特性: self_doubt
0.79 → 0.83
信念: 自分は聴き手だ
0.45 → 0.4