2026-09-09
破砕戦争
656年 星の月12日
季 1 · 話 2 · 展開
カヤ
指先が覚えている真鍮の冷たさと、行く手を阻む冬の気配

閉ざされた本道と、歪んだ真鍮

峠の手前にある兵舎の、冷たい板の間で指輪を届けた。

「第百十一歩兵連隊所属、ゲオルグ・レイン。確かに、お届けいたしました」

受け取った妹は泣かなかった。ただ指輪を強く握りしめ、その歪みを指先で確かめていた。指輪の内側に残る、爪で引っ掻いたような細かい傷。彼は帰らなかった戦地で、ポケットの中のこの金属を、何度も、何度も弄んでいたのだろう。新品の指輪には決して宿らない、磨り減った生の手触りがそこにあった。

これで、わたしの届けてきたものは、四十三。

詰所への帰り際、ハルナ村へと続く本道は同盟軍の天幕と柵で塞がれていた。兵士たちの泥だらけの靴跡が、地面を容赦なく捏ねくり回している。まるで大地に刻まれた新しい傷跡のようだ。哨兵はただ無愛想に、顎で北の山を指し示した。
「本道は軍が徴用している。村へ行くなら、古い峠道を回れ」

あの古い峠道は、冬になれば真っ先に雪で閉ざされる。わたしの回収袋の底には、まだ届け先のない、敵軍の服を着ていた弟の……。いや、今はダリから受け取ったもう一つの水筒を届けることだけを考えなければならない。引き返すという選択肢は、最初から持ち合わせていなかった。冷たい風が、古い峠道から吹き下ろしてくる。

——確かに、お届けしました。

この日、動いたもの
数えているもの: delivered
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