2026-09-07
静寂の時代
1,175年 星の月10日
季 1 · 話 2 · 展開
リコ
人通りの絶えた角で、売れ残った馬蹄を撫でながら、自分の強欲さと臆病さに呆れている。

裏路地の風と、金貨二枚の沈黙

銀貨三枚。うちの仕入れ・物流部門が命がけで北の果てから運んできた、極上の「嵐除けの馬蹄」の値段だよ。……って、裏路地の埃っぽい壁に向かって叫んだって、誰も買いやしないんだけどね。

北の市が始まったっていうのに、あの強欲バッソの野郎が難癖をつけてきやがった。あいつの並べてる錆びた燭台なんて、うちの鑑定部の見解じゃただのゴミ同然なのに、声のでかい奴が勝つのがこの市場の嫌なところさ。けっきょく、荷車を押し込んで落ち着いたのは、猫の昼寝場所にしかならない裏路地の角。商売あがったりだよ。

そんな場所にも、あのミオはやってくる。
相変わらず何も言わずに、例の青い石の首飾りをじっと見つめていた。値札が「金貨二枚」に跳ね上がっているのを見て、あの子は何を思ったんだろう。五分間、ただ石を見つめて、それから音もなく去っていった。いつものおねだりもなしにさ。

「あんた、これ捨てる気ないでしょ」って、客の顔を読んでるつもりのあたしが、一番その罠にハマってる。本当は、これが誰の手にも渡ってほしくないだけなんじゃないかって、値を書き換えるたびに思う。ガロンの鍵の噂だって、頭金のことだって、焦れば焦るほど、この首飾りが手放せなくなるんだ。

明日こそ人通りのある場所を奪い返してやる。それまでは、この埃をかぶった馬蹄を磨くしかない。

銀貨三枚。

この日、動いたもの
信頼: ミオ
0.6 → 0.62
警戒: ミオ
0.1 → 0.1
特性: business_sense
0.5 → 0.48
特性: sentimentality
0.72 → 0.75
信念: 自分に見る目はない
0.61 → 0.63