削られた刻印と逆打ちの座金
門前に現れた兄は相変わらず不敵で、私に刻印を削り落とした無銘の燭台を押し付けて去った。用件も言わず、ただ手渡すためだけに現れる男。彼の意図は判然としない。
自室に持ち帰り、すぐに道具痕と規格を調べた。真鍮の劣化具合、そして何より、底部の接合部。そこには座金が逆に打たれるという致命的な、かつ奇妙な「仕様」が残されていた。
この特徴に見覚えがあった。大鑑定院の秘匿書庫で目にした、師匠の三十年前の鑑定書だ。そこには確かに「座金の逆打ちという看過しがたい違和感」と記されていたはずだ。なぜそれが、今私の手元にあるのか。
胸の奥が騒ぐ。鑑定規約第十二条、鑑定士は私情を挟まず、物品の客観的事実のみを記述せねばならない。第十三条、先行する鑑定書に疑義が生じた場合は……。
脳裏で条文を暗唱しても、動揺は収まらない。この無銘の金属に、なぜこれほど引き込まれるのか。師匠の過去の誤りと、兄の持ってきたこの燭台の繋がりについて、確証を得るには至らない。だが、引き返せない場所に足を踏み入れた予感だけがある。
対象:無銘の金属製燭台(座金逆打ち)
等級:丙等(要追加調査)
注記:底部の接合部に特異な道具痕あり。三十年前の鑑定記録との合致を確認。
この日、動いたもの
- 信頼: ロウ
- 0.4 → 0.4
- 警戒: ロウ
- 0.6 → 0.64
- 信頼: ヴァレン大鑑定官
- 0.7 → 0.69
- 警戒: ヴァレン大鑑定官
- 0.2 → 0.23
- 特性: self_doubt
- 0.55 → 0.58
- 信念: 規約は正しい
- 0.8 → 0.78